北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

森田まさのり

森田まさのり

VOL14森田まさのり

──北斗の拳って、日本漫画の歴史を変えた作品じゃないですか。原先生自身は、北斗の拳をどう見ていたんでしょう? 売れてる実感が無かったという話は聞いたことが…。

それは単に忙しかったからだと思うんですけど、順位はずっと気にして聞かれてましたよ。読者アンケートで人気投票がありましたよね。

──結果で「よし、今週も1位だ」みたいな感じですか?

逆ですね、逆。原先生は、1位になれなかった週を覚えてるんです。それってほんの数週間なんですけど僕たちに対し「でも、これをぜんぶ足すと2ヶ月分になるんだぞ」みたいなことを言われてました。実際に2ヶ月分だったかはハッキリと覚えてないんですけど、それってスゴい話じゃないですか。原先生の中には1位を取って当たり前なんだという高いプライドがあったんでしょうね。

──モチベーションや誇りみたいな部分ですかね。とにかく命懸けで描かれていたので、その支えとなるものが必要だったというか。

原先生は、だいたいペン入れを3日半くらいでやられてたんですが、スゴいことです。信じられませんよ。

──森田先生にとって、北斗の拳という作品はどういうものですか?

僕の人生を変えてくれて、作品を作っていく上での方向性も示してくれました。つまり、作家活動をしていく上での姿勢ですよね。原先生は絵にすべての情熱を注ぐんだという考えを持ってらっしゃるんです。

──それ、僕もお聞きしたことがあります。作画家じゃなく、漫画家。真っ白なケント紙(※原稿用紙)に自分の思ったものを描く。原作を頭の中で消化して、あくまでも自分の世界観や価値観で描き上げるんだと。

ええ。そういう思いがあるから、それに対しては徹底的に頑張る。見習わないといけないですよね。あと先生は自分の武器を身につけて、それを活用して描いておられるので、僕も武器を見つけて描いていきたいと考えるようになったんです。

──具体的には、どういう?

僕は表情…特に口の表情だと思うんですよね。そこだけは人に負けないようにと。それこそ発音どおりの口が描けるように頑張りましたね。

──あ~。そう。そうですね! 森田先生と言えば、口。鏡を見ながら自分で表情を作って描かれてると聞いたことがあります。あと、舌を出して手の平を上に向ける(笑)。

ええ。そこは自分のこだわりです。

──作風的にはどうです? 「ろくでなしBLUES」とかも、次から次に強いヤツが出てきますよね。

北斗の拳はキャラクターがとにかく豊かじゃないですか。メインキャラクターじゃない、ちょっとしたザコキャラとかで、ギャグっぽいシーンとかあったりするんですよ。そういう部分はすごく影響を受けてます。

──ギャグには手を抜かない。むしろ本気で描くと言われてました。

原作に無い自由な部分…任された部分は特にそうだったと思います。

──原哲夫という稀代の漫画家から伝承された血が、こうして受け継がれて行くと思うと感動です。今日は本当にありがとうございました!

いえいえ。こちらこそありがとうございました。なんだか初心に返れたような気がして良かったです。


〆切直前に森田先生がわざわざ送ってくださった幻の原稿

原先生の影響を受ける遥か昔──。10歳の時に描いた原稿を史上初公開!!

対談終了後、森田先生の「手塚治虫タッチ&藤子不二雄Aタッチ」がどうしても想像できなかったので、ダメ元で当時の絵が無いかを確認してもらったところ…ありました!! 森田先生が10歳の時に描いたオリジナル漫画『土地野(どじの)さん家のたけしくん』。まさに証言通り(?)のタッチであり、ギャグ漫画。ちなみにこれは予想だが、名前の土地野(どじの)は「ドジ」とかけてあるような気がする。そして作者名は本名の「森田真法」。ここから現在のタッチになる……まさに才能だ。

 

 

一流の漫画家になってもなお師・原哲夫を尊敬し続ける姿勢に感服
森田先生のキャリアを考えれば、それこそ「師匠は師匠。俺は俺」って感じになっててもおかしく無いと思うんです。でも、そうじゃない。原先生に褒められたトビラの絵をデスクマットに挟んでいるという話も、聞いたことはあったけど、もしかしたらもう挟んでなかったりして…とか。いまも挟んでいるという話を聞き、なんというか、そういう部分に感動したんです。世の中には「初心忘るべからず」という言葉がありますが、その本当の意味や価値を感じたような時間でした。

南斗聖拳のごとし”多子”相伝 一流の伝承者は一流の道を歩み続ける
後半に出てきたギャグの話。個人的な予想ではありますが、たとえば「ろくでなしBLUES」に出てくる小兵二軍団、エピソード間の短編「ろくでなしぶるーちゅ」。そういう部分のギャグ性は、もしかして“原哲夫イズム”だったりして。ふとそんなことを思った、集英社からの帰り道……。

Interviewer ガル憎
フリーライター。1974年1月4日、広島県に生まれる。北斗の”第一世代”とも称される生粋の団塊ジュニアかつ原作の公式親善大使で、広島東洋カープファン。原哲夫らとの交流も深く、映画「真救世主伝説 北斗の拳 ZERO ケンシロウ伝」のエンドロールにも名を刻む。好きなキャラクターは、トキ。