北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

森田まさのり

森田まさのり

VOL14森田まさのり

──仕事場は原先生と同じだったんですか? 先生だけ別でしたか?

そういうイメージありますよね。でも同じ部屋だったんです。6つのテーブルがあって、3人ずつ壁側を向いて座ってました。ちなみに、僕は原先生の隣でしたね(笑)。

──うわ。それ、ちょっとドキドキしますね。緊張感あり過ぎですよ。

机と机の間に本棚があって、そこに隙間があって。その隙間から描いてる姿を見たりしてましたね。

──たとえば、原先生が煮詰まって絶叫するとかはありました?

そういうことはなかったです。淡々と仕事をこなしている印象が強かったです。ただ、机の下で寝られてたりしたことはありましたけど。

──え? 机の下ですか?

アシスタントと食事に出て、帰ってきたら先生がいないんですよ。そしたら机の下に…。厳密には寝てたというよりも、体力を使い果たしてガターンと下に落ちて、そのまま寝られてたんです。そういうのを見て驚いたと同時に、スゴいなあと。

──精神も身体も削って描かれてた証拠であり、これが漫画家だ…と。

ええ。ひたすら黙々と、集中して描かれてるというイメージです。

──逆に、意外なエピソードはありますか? 面白い話とか。

う~ん。面白いかどうかは分かりませんけど、僕の後ろにテレビが置いてあったんですよ。たまにテレビを点けながら描くことがあって、みんなで観たりとかするんです。でも原先生は相変わらず黙々と描かれてるんです。なんか面白いシーンがあってみんな笑ってたりして「原先生は観なくていいのかな?」なんて思ってたら、机に置いてある鏡越しに観てクスクス笑ってました。

──はははは。なんか、微笑ましいエピソードですね、それは。

あと、原先生を屋台のラーメン屋で見かけたこともあります。

──屋台? 原先生が、屋台?

イメージとしては「ちょっと寿司でも食ってくる」みたいな感じでもいいじゃないですか。ジャンプを支えてる作品を描かれてるんで。

──そうですね。それで、土産で寿司を買ってくる…みたいな。

いま思うと、食べてすぐ仕事に取りかかりたかったんだと思います。

──武論尊先生とお話した時に「原先生は毎日のように描いていたよ」と言われていました。ほぼ7日間。それって事実上…休みナシですもんね。

ですね。原先生は5ページ下書きをしたら人物にペン入れして、また5ページの下書きをしてペン入れをしていく感じだったと思います。それである程度、背景のあるコマが溜まってきたらアシスタントの僕たちを呼ぶ感じだったのかな? 日数にして週に3日半ぐらいだから僕たちは仕事場に3泊してましたね。

──それは意外です。つまりは、週休3日くらいってことですよね?

僕たちはそうですね。先生に「水曜日に連絡ちょうだい」と言われて水曜日に電話をすると「じゃあ木曜日の9時から来て」という感じです。

──原先生クラスになると逆な感じもしますよね。キャラクターにペン入れをして「あとは頼む」とか言って帰っちゃって、飲みに行く。残されたアシスタントはフロに入る時間どころか寝る時間も無い…みたいな。

そういうのは無かったですね。むしろキャラクターにペン入れをしたあとにお風呂に入られるんです、仕事場にあるんで。すると、すごくいい匂いをさせながら出てくるんです。

──はははは。バスタオルで頭を拭きながら「どう?」みたいな。

そう! まさにそうです。それが本当にいい匂いで、みんなで「なんの匂いなんだろう」って話してて。変に思われるかもしれませんけど(笑)。

──いや。分かります。そういうの分かりますよ。同じ空間にいても憧れの存在なんですから。

だから知りたかったんですよね。ボディソープなのかシャンプーなのか化粧品なのかって。なにを使っていたのかいまでも聞きたいです(笑)。

──分かりました。次にお会いする機会があったら聞きます(笑)。

匂いって記憶に残るんで、当時の感覚とかも思い出せそうですね。