北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

千葉繁

千葉繁

VOL13千葉繁

──ケンシロウのように上半身が裸でドーンと仁王立ちしてれば。

そう。ザコと呼ばれる人は、ああいう乱世になってしまったから、生きるために必死なんです。だから強い人間に付いて行くしかない。そのためにどうするかと言うと、気が弱い部分を隠すために、頭を剃って銃器を持って相手を威嚇する。

──いや~。その考え、僕には無かったですね。なんていうか、もともとゴロツキだった人、悪い人がそういう風になってるようなイメージで。

核が落ちて急にあんな世の中になったんだから、ザコの中には普通のサラリーマンだった人もいたはずなんですよね。でも、拳王軍にいるとケンシロウが敵だから、ケンシロウが来た時に闘わないといけない。ビビってても悪そうな顔で威嚇をして。

──千葉さん。なんだか急にザコキャラたちが愛しくなってきました。

でも実際そうでしょ? ケンシロウを挑発するんだけど、強くないからすぐに殺されちゃう。そこで彼の人生は終わってしまうんですよ。だから僕は、その人生が終わるときになにを思うんだろうとか考える。原作に出ないキャラなら、名古屋出身と決めて名古屋弁で死ぬとか。

──あ~。ありましたね、断末魔が方言になってるザコとか。

あの舞台を東京と考えると、地方からいろんな人が来てるわけ。そういったイメージで、それぞれが持ってる地方性というか独特の言葉を多用することによって、混在した世界を表現したかったんです。

──いや~。僕は、てっきり遊びで取り入れていたのかと思ってました。

もちろんね。ひと言で死んでいったりするんで、そういう遊び心みたいなものはありますよ。ただ、方言なんかは意図して入れてます。だって全員が標準語だと変でしょ?

──たしかに。聞いていて違和感は無いかもしれませんが、冷静に考えると変ですね。たとえば千葉さんは熊本出身、僕は広島出身。もし僕が拳王軍でケンシロウに立ち向かうことになったら、やっぱり「ぶち殺しちゃるどワレ!!」と、広島弁で飛びかかると思います。標準語だとテンションが上がらないというか(笑)。

まさにそこです。そこが原作を膨らませるリアリティなんですよ。

──いずれにせよ、北斗の場合はアニメでイメージが完成したものが多いです。

完成というのは?

──代表的なものを挙げるならレイですね。相手を斬る前の「ヒョ~~~」なんかは原作を読んでる時には頭の中に無くて、アニメを見て南斗水鳥拳のイメージが完成した部分があるんです。斬る前もそうだし斬る時の「シャウ!」も。

うんうん。あれは本当にカッコ良かったですね。

──それ以降、原作を読むと頭の中でレイの声が浮かんで絵に動きが出てくるようになりました。

あれは塩沢さん(※5)の真骨頂でしたね。

【※5】塩沢兼人
「機動戦士ガンダム」のマ・クベ役で独特の悪役演技を形成し、以降も個性的な役を演じ続けた大声優。2000年5月に46才でこの世を去るが「クレヨンしんちゃん」など、塩沢氏が演じたキャラクターに哀悼の意を表し「再登場させない」作品などもあり、それらのエピソードからも、多くの人に愛された人物であることが伺える。

──そうですね。レイが初登場してあの声を聞いた時「これだ!」って感じがしたんです。ビビッと来て。ケンシロウは違和感ありましたけどね。

違和感? それはどういう?

──やっぱり、当時はキン肉マンの声というイメージが強くて。僕は小学生でしたけど、学校で「ケンシロウの声がキン肉マンかよ~」って、みんなで文句を言ってましたから(笑)。

あ~。そういう意味で。でも、僕の中ではケンシロウ=神谷さんかな。

──ええ。結局は慣れるんですよ。