北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

原哲夫

原哲夫

VOL10原哲夫

──そういう中で始まった北斗の拳なんですが、たとえばこれ。ジードが怒ったところに「う~」という擬音が書いてあるんですが、以降は使ってないと思うんです。すごく印象深くて。

これはね、大友克洋さん(※4)の影響なんですよ。

【※4】大友克洋
言わずと知れた日本漫画界の巨匠。1988年に自ら映画化した「AKIRA」は当時の日本アニメ技術の結晶とも言うべき作品で海外でも圧倒的な評価を獲得、後の「ジャパニメーション」ムーヴメントの先駆者となった。同氏の作品は独創的な物語と緻密な描き込みが最大の特徴で、漫画の域を超えた“芸術作品”として、圧倒的な地位を確立している。

──あ~~~。なるほど! 擬音の新しいスタイルの模索だったんですか。

「AKIRA」の連載を見て、特に背景なんかは、ものすごく影響を受けてますね。あとは乗り物だったり俯瞰(ふかん)で人がいっぱい出てくるシーンだったり。

──以前、おっしゃってましたね。

とにかく必死でしたから。取り入れるものは取り入れて死ぬ覚悟で描いてました。100%じゃダメなんですよ。その上…120%出し切らないと。

──多くのものが北斗の拳に影響を与えたというわけですね。

世界観の話で言えば映画の「マッド・マックス2」や「ブレードランナー」、絵に関しては大友先生、フランク・フラゼッタ、ニール・アダムス、それからシド・ミードあたりの影響が強いです。

──ケンシロウも、いろんな人物の要素が入ってますもんね。

そうですね。これまで何度も言ってきましたが、ブルース・リーや松田優作さん、メル・ギブソン、シルベスター・スタローンを混ぜてます。

──代表的なイメージは、僕が好きなのもあると思いますが「マッド・マックス2」。これなんです。まさに北斗の世界観そのものという。

他にもありますよ。物体Xとか、あとは超人ハルクなんかも。

──遊星からの物体X! それは初耳です! でも、グロテスクな感じ、ハルクの雰囲気。言われてみると…。

その当時、堀江さん(※5)に「マッド・マックス2とブレードランナーを観てこい」って言われて、あれで世界観を掴んだ。すると次は「シド・ミードの個展をやってるから見てこい」ってまた堀江さんに言われて、見に行って。

【※5】堀江信彦
北斗の拳の担当編集にして「週刊少年ジャンプ」の5代目編集長。物語の骨子となる北斗神拳のアイデアを考案した人物で、北斗の拳における第三の作者とも言われている。2006年から制作された映画「真救世主伝説北斗の拳」の脚本なども担当。

──原先生に可能性を感じて、とにかく北斗の礎(いしずえ)となるものを吸収させたかったんですね。

読み切りの北斗は現代劇だったけど連載の原作は世紀末が舞台。だから「マッド・マックス2」なんかはもうビビっと、一発で入っちゃいましたね。

──ちなみに、これは言っていいことか悪いことか非常に迷うのですが、せっかく連載1回目の生原稿があるんで…。

……ん? どうかしました?