北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

鯉沼久史

鯉沼久史

VOL03鯉沼久史

──ケンシロウが原作のコスチュームになるというのも、いまの話を聞くと当初と印象が違いますね。まずは無双らしい北斗である…と。

とは言え、好き放題にやってるワケじゃなくて、何度も修正指示がありましたね。原先生から。コスチュームというより、むしろシルエットとか筋肉の動きとか、そういう部分。

──はいはい。原先生の筋肉論。僕も少しお聞きしたことがあるんですけど、凄いですよね、次元が。

そこに関しては、ウチのイメージより先生のイメージが最優先で。

──なんていうか、あの筋肉論は調べ尽くしてる感じですよね?

筋肉の付き方が違うという指摘を受けて(※4)、最後は「分からなかったら黒人のボディービルダーの本を買ってきてそれ見てください」って。本当に買ってきて見てたぐらいなんで。

【※4】筋肉の付き方が違うという指摘
ゲーム側が書いたイメージデザインに、原先生が自ら訂正を入れる。筋肉のつき方からシルエットに至るまで、細かく、かつ実際の肉体や筋肉に忠実な表現が求められたのだ。単なる屈強な肉体ではなく、いかに人間の筋肉を表現するか。無双シリーズに原先生のマンガ家としての”遺伝子”が注がれたのだ。

  

──この上腕三頭筋はこういう風にならないとか。

そう。まさに、それです(笑)。ここに力を入れている時の筋肉は膨らむんじゃなくて、むしろ「へこむ」んだとか、細く。修正指示をいただきました。力を入れて殴るから腕が太くなるとは限らないんだと。こっちが描いたラフデザインに、赤い線で修正がバンバン入るんですよ。

──ここは膨らむ、ここはむ、この筋肉の大きさはこう…とか。

ええ。ラフデザインは2D。全体のシルエットが決まって、そういう筋肉の修正が入って、そこからモデリングという作業に入りました(※5)。

【※5】モデリング
2D(2次元)の平面情報をコンピュータの演算によって3Dに変換し、立体的な表現を行う処理のことを指す。左写真がまさにそのモデリング(3D)映像であり、これを上下左右、自在に操り開発作業を進めていく。右にある絵コンテがこのようになり、キャラに命が吹き込まれるのだ。

 

──ちょっと変な言い方になるかもしれませんが、その修正や指示で改めて筋肉の勉強ができた。北斗以外に出る今後のソフトにも役立つ部分があったんじゃないですか?

そうですね。現場のCG担当者なんかは勉強になったと思います。リアルさを追求するなら、先生がおっしゃってることが正論なわけですし。とにかくそれを基準にしましたね。>

──僕は、マンガ家である原先生の中でそこまでの動き、筋肉の形と大きさのイメージがあるというのに驚いたんですね。マンガって動かないじゃないですか。静止画なのに動きを徹底的に研究するという。

僕たちは動くものを作っていくじゃないですか。逆に原先生の絵は、それこそ静止画。止まってるのに、いかにも動きそうな絵を描かれるじゃないですか? 本当に凄いですよね。

──もしかすると、先生の中では完全な動画で、そこから描くべきものを抜き出す。つまり頭にある映像から1コマ、1コマを描き起こしてるイメージなんですかね?

そうなんですよねえ。動いてない絵や止まっているものを見て、そこに迫力を感じるんだから、かなり高度な世界なんだと思います。結局、筋肉を理論で描かれてるわけで。