北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー

北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー北斗語り北斗語りとは

日本マンガ史にその名を刻む名作「北斗の拳」が2013年、連載開始「30周年」を迎える。
この記念すべき年を意義あるものにすべく、原作の公式親善大使が豪華ゲストを迎えて対談。
これまで語られてきた北斗、語られていない北斗。
北斗に魅せられし者たちが届ける大型新連載、愛深きゆえに行われる。

武論尊

武論尊

VOL01武論尊

──ガル憎(以下略)改めまして、今回はよろしくお願いします。

武論尊(以下略)はい。よろしく。

──この対談は北斗の拳の集大成的な意味合いもあるので、自分が知っていたり、先生が何度もお答えになっていることも聞かせていただきますが、どうかご了承ください。

はい。了解しました。

──まずは原作を担当することになった経緯からお願いします。

依頼が来てね。当初は現代劇…あれは少年院だったかな? そこから高校生のケンシロウが脱獄するみたいな設定になってて。現代版の仕置人のような感じだったんだよね。

──つまり、読み切り(※1)の流れを汲んだ感じですか?

【※1】北斗の拳(読切版)
主人公・霞拳四郎が北斗神拳で恋人の敵討ちをする現代劇。ケンシロウのモデルとなる主人公や「お前はもう死んでいる」の元になるセリフはこの時から存在。1983年に「フレッシュジャンプ」誌上で2作が描かれ、共に読者人気1位を獲得。同年に連載がスタートした。

読み切り版を見て、まずは北斗神拳の面白さがあった。あと「あんたもう死んでるよ」。あのフレーズがポンと頭の中に入ったんだな。

──先生の中でも、あのセリフがポイントになったわけですね。

この拳法とこのフレーズがあれば面白くなるんじゃないかなと。あの死に方ってタイムラグが使えるから。

──あ~。何秒後に死ぬとか、それを書く側で調整して使える…と。

ただ、現代劇じゃダメだろうなっていうのがあってね。俺が『ドーベルマン刑事(※2)』の原作をやった時、まさに仕置人のような感じでという提案があったんだよ。たしか、1~2話分は原作を書いたのかな? でも面白くなくてね、ぜんぜん。その時の原作者としての直感というか、そういうものがあったから、北斗も現代劇じゃ絶対にダメだと思った。

【※2】ドーベルマン刑事
1975年から1979年にかけて「週刊少年ジャンプ」誌上で連載された、平松伸二&武論尊コンビのヒット作。映画「ダーティハリー」をヒントに描かれた刑事モノだが、これは原作者である武論尊が連載開始直前に考案(変更)したストーリー設定である。

──そこで出会ったのが映画『マッドマックス2』というわけですね?

そう。マッドマックス2。無法の荒野というものが映像として目の前にあるわけでしょ? そこにケンシロウを置いてみたんだよね、イメージ的に。その瞬間に「これはイケるかもしれない!」って思ったんだ。

──まさに「力こそ正義」を地で行く暴力世界。大好きな映画です。

近代兵器が無い世界なら、間違いなく拳法というものが生きてくるし最大の武器になるだろうと?

──たしかに、あの場所にケンシロウがいればヒューマンガスなんて怖くないですね。銃は持ってるけど数発しか弾も無いんで(笑)。

あと、カンボジアのキリング・フィールド(※3)に行った時の体験も生かされてるよね。かつて大量虐殺が行われて、いまも頭蓋骨がゴロゴロ転がってるあの光景。そこで暴力の凄さや無残さみたいなものを見て北斗神拳が合うと思ったんだ。

【※3】キリング・フィールド
カンボジアのポル・ポト政権時代に大量虐殺が行われた場所の俗称。知識人や文化人、教師などは反革命者であるとして、それらの人々を次々と虐殺。現地には当時の痕跡が色濃く残されており、人類の「負の遺産」として世界中にメッセージを発し続けている。

 

──世界観ですよね。文明というものが崩壊した、暴力と恐怖の世界。

でも、これって第1話の話だから。そこでもう「第2話はどうしよう」ってなるわけよ。第1話はインパクトだけで押し切ったけど、そもそも、なんでコイツは旅をしてるんだと。

──ケンシロウがミスミの爺さんのお墓に「実るさ…」と言いながら種モミをくラストシーンのアイデアが出た時に「このマンガは本当にイケる!」と思った。北斗ファンもしくは僕の中では有名な話ですが。

あれは本当に〆切ギリギリでね、この話じゃダメ、これもダメとやってるんだけど、時間が無いから原先生は描き始めてるわけよ。そこで「実るさ…」というセリフが、ポンと出てきて「これだ!」と。完成を待ちわびてた堀江君(※4)がその原作を手に飛び出して行って、いままでの原作をぜんぶボツにして。あの時の原先生は本当に振り回されたんだ(笑)。

【※4】堀江信彦
北斗の拳の担当編集にして「週刊少年ジャンプ」の5代目編集長。物語の骨子となる北斗神拳のアイデアを考案した人物で、北斗の拳における第三の作者とも言われている。2006年から制作された真救世主伝説「北斗の拳」の脚本なども担当。

──その話、どこかで聞いたことがあります。原先生かも…(笑)。

俺も何回、第2話の原作を書いたか分からないよ。でもあのラストで物語の流れができたっていうか、展開が見えたんだよね。それで、今度は女を出そうと。つまり、ユリアね。あとは胸に七つの傷があるから、その理由を解き明かすことにした。